1999年(平成11年)活動内容
(I) 概要
ISOEの活動を大きく分けると、データ収集とデータベースの管理、運営会合や各種専門家会合への出席、分析報告書の作成、等になる。

これらのうち、データ収集とデータベースの管理については、国内データの収集と、情報交換を行うとともに、アジアセンターの電算機システムの整備を行い、データベース管理機能の向上を図った。

運営会合等については、1999年10月末に、第9回運営会合と幹部会に出席した。

情報交換については、CEPNが作成した第7年次総括報告書(1997)及び第8年次総括報告書(1998)が出版、配付された。一方、ISOEアジア技術センターのホームページの更新を行った。また、インフォメーションシート No.9(BWRシュラウド取替工事と除線)、No.10(ABWR第1回定期検査における被ばく実績)、No.11(国内の被ばく状況)と No.12(国内の定検中の被ばく状況)、及び国内関係者のISOEに対する理解を深めるために、アジア技術センター活動報告書(1999年)を発行した。その他、国内関係者及び他の地域技術センターからの問い合わせに対応した。

それぞれの事項の詳細は以下の通りである。
(II) データ収集と情報交換
日本国内の電力会社等に対し1998年度データ提供を依頼し、6月中に全てのデータを収集することができた。これらの収集したデータを整理した後、7月中旬には全技術センターのデータ集計を行っている欧州技術センターへ送付した。また、6月末に他の参加国のデータを収めたフロッピーディスクが欧州技術センターより送付されたことから、アジア技術センターの参加者に配布した。
(III) 電算機システム整備
ISOEの被ばくデータ収集項目やデータベースの改良に対応し、当センターのデータベース・システムの整備を行っている。
(IV)第9回運営会合及び幹部会への出席
平成11年10月末に開催された第9回運営会合と幹部会に出席した。3つのワーキング・グループ(データ分析、ソフトウェア開発、ISOE2指標)よりそれぞれの活動に関する報告があった。また、規制当局側の副議長の交代・選出、ISOE新規約の承認、ワーキング・グループの実施項目の検討、等が行われた。

他の議事内容としては、1999年の計画の達成状況、各技術センターの活動状況、次年次活動計画、国別の報告等があった。一方、ISOEへの参加状況としては、新たにアルメニアの規制当局と電気事業者がIAEAを通して参加することになった。また、ドイツの実験炉AVR(廃止措置中)もISOEに加わった。
(V)アジアセンター・ホームページの作成
平成10年3月に開催された幹部会で、各技術センターごとにホームページを開設することとなった。これを受け、アジア技術センターのホームページを作成し、平成11年3月より運用を始めている。今年度末に、部分的に内容の更新を行った。引き続き、特に国内に向けてのISOE活動に関する情報発信に努めていく。
(VI)情報交換支援
(1)ISOEの第7年次報告書(1997)及び第8年次報告書(1998)が出版され、参加者に配布されたことから、国内関係者向けに日本語訳版を作成、配布した。

(2)アジア技術センターとしてインフォメーションシートNo.9(BWRシュラウド取替工事と除染)、No.10(ABWR第1回定期検査における被ばく実績)、No.11(日本国内の被ばく状況)およびNo.12(日本国内の定検中の被ばく状況)を発行し、アジア技術センター内関係者及び他の技術センターに配布した。なお、日本国内関係者のISOEに対する理解を深めるために、アジア技術センター活動報告書(1999年)を発行した。

(3)その他、海外からの請負業者の入所・線量管理についてのアンケートや、電解研磨についての質問等、他の技術センターやISOE参加国からの問い合わせに対し、アジア技術センターのメンバーからの回答を取りまとめて返信する等の対応を行った。
(VII)ISOEデータの分析
ISOEで集計しているデータの例として、原子炉1基当たり年間被ばくの年度推移を炉型別にまとめたものを主要国について図に示す。

1998年度の日本のBWRの実績は1.78人・Svであったが、日本より少なかった国はフィンランド(1.03人・Sv)、スウェーデン(1.55人・Sv)、ドイツ(1.56人・Sv)で、多かった国は米国(1.9人・Sv)であった。また、長期的傾向としては、1970年代から 1980年代前半にかけてドイツ、米国、日本において被ばくが多かったものの、種々の被ばく低減対策が実施された結果大幅に減少し、近年ではそれぞれ、ほぼ一定のレベルで推移している。ドイツにおける1993、1994年の線量は、再循環ポンプの交換や配管システムの溶接部検査により高くなった。フィンランドやスウェーデンは1980年代を通して1〜2人・Svあるいはそれ以下で推移してきているが、このような実績を保ってきたのは主に、燃料の健全性、低コバルト鋼使用による放射性腐食生成物の低減、復水スクラビングと原子炉冷却材浄化系による水質維持、インターナルポンプの採用等によるものである。また、スウェーデンで1992、1993年に線量が高くなっているのは、1992年のストレーナ目詰まりによるトラブルを受け、いくつかの発電所で改造工事が行われたためである。1996、1997年は安全規制への適合工事のために線量が高くなった。

PWRにおける1998年の実績は、日本が0.96人・Svで、その他の国は0.55〜1.2人・Svの間にあった。長期的にみると、いずれの国も 1980年代後半からは緩やかに低減しながら安定して推移しており、ここ数年はいずれの国でも1〜2人・Sv程度である。ドイツにおける1994、 1995年の線量が高くなっているのは、一次系冷却システム溶接部の非破壊検査が多く行われ、また、検査の拡大やバックフィットにより運転停止期間が延長したことが大きく影響している。
(VIII)まとめ
ISOEの活動は、規約に基づき設立された4箇所の技術センターを中心に実施されている。各技術センターは個別の予算を持ち、また、所属メンバーから要求される活動・サービスの内容が異なっていることから、活動の重点・方向性が微妙にずれてきているように思われる。我が国における現状認識としては、通常運転や定期検査時におけるルーチン作業に対する被ばく低減対策はほぼ確立されていることから、被ばくデータの詳細な比較分析には積極的な関心は無いものの、 ISOE人的チャンネルや運営委員会の場における情報交換は有用だと捉えている。情報交換を通じたALARAの実現という、ISOEプログラムの共通目的達成を第一義とし、その目的内で可能な限りの国際協力を行い、ISOEの成果物から、日本における被ばく低減に少しでも具体的成果を得られるよう、今後も活動を継続していく。